このところ少し宵っ張りなのですが、寝る前に朝に纏わるお話を少し。谷川俊太郎さんの訃報を知って最初に思い出したのは「朝のリレー」という詩でした。その詩が私の心に残っているのには、大きな理由があります。20代の頃にずっと、夕方に起きて午前遅くに寝るというブラックな生活をしていたのですが、日が短くなる秋冬には特に朝の訪れが待ち遠しかったんですね。何百回も繰り返し繰り返し、朝を待っていました。そうして、日が昇って光が差してくる度に少しホッとしたものでした。
そういった日々を送る中で、ある日、一枚の絵葉書をもらいました。空を背景に谷川俊太郎さんの「朝のリレー」の詩が綴られた絵葉書です。送り主からすると、暑中見舞いに何気なく選んだものだったのでしょうが、いつだって朝を待ち続けていた私にとっては、本当に大きな気付きになりました。世界のどこかに必ず朝が存在しているということが……自分で意識することも気付くことすらなかった情景が心に刻まれて、それが救いになったんですね。詩や物語が人の心を救うこと、言葉や文章が人の心を支えること……それを、身を以て知った瞬間でもありました。
谷川俊太郎さんでもう一つ、「アレクサンダとぜんまいねずみ」という絵本。これは「スイミー」で有名なレオ=レオニさん作の絵本ですが、訳者が谷川俊太郎さんです。外国語を訳すというのは、本当に途方もない作業です。映画の字幕一つでもそう、見知らぬ誰かに対してどんな風に言葉を使って伝えるのか、それを一番に考えないといけない。谷川さんの訳は、言葉のひとつひとつが優しさに満ちていると感じます。私には到底使えないであろう温かい言葉を、とてもわかりやすく使っている人なのだと思います。
そんな「アレクサンダとぜんまいねずみ」ですが、実は数年前に本屋さんで手に取って初めて読んだ絵本だったりします。大人になってからの方が遥かに胸に染みるし、色々と考えさせられる。そんなお話。小さい頃に何度も読んだ「スイミー」も好きだけど、「アレクサンダとぜんまいねずみ」は、幸福とは自由とは一体何なのだろう、とかそういうのを考えさせられる素敵なお話でした。
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